街を歩いていると色んな住宅を目にしますが、種類が多いことに驚く方もいるのではないでしょうか。
マイホーム購入を検討している方は、外観にも影響する屋根の形を知ることは重要なポイントになります。
なだらかな形状のものから急斜面でシャープな屋根など、細かく分類すると16種類にもなり、それぞれに特徴が異なります。
本記事では、屋根の形状別に見たメリット・デメリットやおすすめ屋根材と選び方も紹介していますのでぜひ参考にしてみてください。
16種類の屋根の種類別にみるメリットとデメリット
人の体で言えば屋根は住宅を守る頭の部分であり、複雑な構造でありながらも快適な住環境を守るために、外部からの刺激を遮断します。
雨風はもちろんですが、日射や熱から守り保護する役目を持っているのが屋根です。
屋根は住宅の印象を左右するだけでなく、形や素材によって機能性や耐久性に違いがあり、地域や環境に合わせて選ばれています。
ここでは屋根のデザイン別のメリットとデメリットを紹介します。
切妻(きりづま)屋根
多くの住宅で見られるデザインで、本を開いて伏せたような、なだらかでやわらかい印象の屋根です。
構造もシンプルで、瓦だけでなくトタンやストレート屋根にもマッチするデザインのため人気があります。
住宅のデザインを問わず馴染みやすいことや、省エネ住宅に欠かせないソーラーパネルの設置がしやすくなっています。
施工に時間がかからずコストパフォーマンスが高く、屋根裏スペースが広くとれますから換気性や通気性の良い住宅です。
大衆向けデザインのため、個性が出しにくいことや、断熱性や耐風性には弱いのがデメリットと言えるでしょう。
寄棟(よせむね)屋根
屋根にかかる力を棟から軒先に4方向に分散している形状の屋根です。
落ち着いた見た目になりますから、住宅のデザインに合わせて瓦で和風にしたり、洋風にしたりできます。
日本家屋らしい落ち着いた住宅にしたい方におすすめの形状で、台風や大雪被害が多い地域では、多く見られます。
四方に屋根があるため、太陽光や雨風から外壁を守り劣化を抑えてくれるのが特徴です。
屋根が低くなるため住宅内の通気性はやや劣り、屋根裏スペースがなくなるため、収納などを検討している方は注意しましょう。
また、接合部が多くなるため、施工が甘いと雨漏りしやすくなりますし、屋根が広くなるため、施工費用はやや高額になるのがデメリットです。
片流れ(かたながれ)屋根
近年はモダンな箱型の新築住宅が人気で、片流れ屋根が採用されています。
外観がおしゃれなことや、海外の住宅のようなモダンなイメージがあるのも人気の理由です。
屋根の傾斜は片側に向いていますから、ソーラーパネル設置が簡単にできます。
屋根裏が小さくなるため、吹き抜け空間を作り、金属屋根・立平葺きでスタイリッシュな仕上がりです。
初期費用も抑えられますし、メンテナンス費用も他の屋根と比較するとコストを抑えられます。
外壁に直接雨風があたりますから、劣化も早まりますし、構造上の問題で換気がしにくくなるため、結露しやすくなっています。
換気しやすい構造を考え、定期的なメンテナンスである程度は解決できるでしょう。
陸(りく・ろく)屋根
平屋根、フラット屋根とも呼ばれており、雨水が屋根に残らないように排水勾配でわずかな傾斜があります。
屋根裏のスペースが必要ありませんから、空間を広く利用できるため、拭きぬけのある開放感のある住宅になります。
部屋の天井が高くなることで、居室内で開放感を感じることができるのが特徴です。
スタイリッシュな外観は洋風住宅に多く採用されており、屋上スペースとしてガーデニングや太陽光発電の設置がされています。
傾きがないため、傾斜がある屋根と比較するとメンテナンス費用が安く、掃除や補修も簡単なものであればDIYできます。
傾斜がないため、雨や雪がそのまま屋根に残ってしまうため、雨漏りの原因となってしまうのです。
また断熱性も低いため、施工の際に断熱材や遮熱塗料などを使い防水工事が必要になります。
方形(ほうぎょう)屋根
均等な形状のため屋根内部の構造もバランスに優れ安定感があるため、耐震性も高く台風にも強い造りにできます。
雨や雪を分散できるため、外壁への負担も軽減され美しい外壁を長期的に保てるのがメリットです。
メンテナンス費用の節約や隣地境界線にも対応しやすいなど規制が厳しい都心部でも利用されるようになりました。
4面ある屋根と屋根の間には傾斜のついた棟ができ、この部分からの雨漏り発生リスクが高いため注意が必要です。
屋根裏スペースが狭いため、換気扇が設置しにくく結露しやすく設計や施工で工夫が必要になるため、手間が増えるのもデメリットでしょう。
入母屋(いりもや)屋根
寄棟屋根に切妻屋根をかぶせたような作りの屋根で、重厚感があり格式の高い印象を与えます。
武家屋敷や寺院、お城でも見られる日本の伝統的な屋根形状で、和風の外観を強く押し出した個性的な屋根と言えるでしょう。
耐風性や断熱性に優れており、重なる部分には窓を設置し通気性を高められます。
一般住宅では少ないですが、平屋住宅で取り入れられることも多くなりました。
入母屋屋根は特殊な技術力を必要としていますが、施工できる職人が少なく、構造上が複雑でコスト・メンテナンス費用が高額です。
地域の特性で、入母屋屋根が多い地域もあり、奈良や京都、金沢などの観光地で多く見られます。
半切妻(はんきりづま)屋根
半切妻屋根は、斜線規制や日影規制等の制約のために用いられることが多い形状です。
フラットな台形部分には、ソーラーパネルの設置もできますので省エネ住宅にも向いています。
使える屋根材が豊富なため、洋風にするとおしゃれで個性的な外観になります。
見た目を重視すると機能性がやや劣り、面が多くなるため雨漏りリスクは高いです。
定期的なメンテナンスはもちろんですが、施工段階で雨漏りしないような工夫が必要になるため、工賃が高額になります。
招き屋根
屋根の長さが均等ではなく、一辺が短く反対が長くなっている屋根を招き屋根と呼んでいます。
シンプルな構造で、平屋の天井を高くし外観が2階建てのように見せられます。
屋根自体はシンプルな作りのため、2階建て住宅にも採用され、工事やメンテナンス費用を抑えられるのがメリットです。
広い方にはソーラーパネルも設置できるため、平屋の省エネ住宅でも利用されています。
家の外観に関しては好みがありますから、左右非対称の屋根はダサいと感じる方もいるでしょう。
外壁とのバランスでモダンな雰囲気にはなりますが、屋根と外壁の色や素材などを考える必要はありそうです。
差しかけ屋根
モダンな印象を演出できることからも、洋風住宅に多く利用されています。
屋根に段をつけるため、空間が確保しやすく収納スペースを設けることが可能です。
平屋を差掛け屋根にすることで、効率的に住宅内を利用できるのはメリットの1つになります。
屋根が下がる部分に窓を取り付けることで、住宅内に採光を取りいれ通気性を高められます。
収納スペースを屋根裏に設置した場合、湿度を気にすることなく保存が可能です。
通常の屋根よりも風に強く、ソーラーパネルの設置もできるため省エネ住宅にも適した形状といえます。
ただし、屋根の接合部に雨が溜まりやすく、雨漏りしやすいのがデメリットです。
越(こし)屋根
古民家によくみられる屋根で、立ち上がりに採光窓を設置して住宅内に採光を取り入れます。
雨風が住宅内に入り込みませんし、通気性も高くなるため夏は涼しく過ごせるのも特徴です。
十分な高さがありますから、住宅内を開放的な空間にできるメリットがあります。
機能性はもちろんですが、外観に存在感や風格が備わるため、典型的な日本家屋に切妻屋根を施工する人もいます。
複雑な構造のため、建設費用はもちろんですがメンテナンス費用が高額になります。
結節部やつなぎ目が多い越後屋根は、雨漏りにも弱いことに留意しましょう。
バタフライ型屋根
切妻屋根を逆さにしたものをイメージするとわかりやすいのですが、真ん中が低く外に向かって高くなっています。
個性的な形状は他の家との差別化ができますし、ソーラーパネルの設置も簡単です。
屋根に谷ができていますので、水や雪などが溜まりやすく不便なだけでなく、素材によっては錆などが発生するデメリットがあります。
腐食や雨漏りリスクも高いため、定期的な修理やメンテナンスが必要です。
防水加工など住宅を維持するための費用がかかり、
錣(しころ)屋根
寄棟屋根の上に切妻屋根を乗せたように大棟周辺が高くなっているのが錣屋根です。
一般の住宅では見る機会が少ないですが、寺院の敷地内の建物に使われていた屋根で文化遺産に多くみられます。
現代でも寺社仏閣で拝見することができ、厳かで迫力のある屋根は日本の伝統建築の1つです。
複雑な構造のため、施工できる職人が少なく、仕上がりまでに時間がかかります。
つなぎ目が多いため、雨漏りリスクが高いことはデメリットと言えるでしょう。
鋸(のこぎり)屋根
こぎりの歯のように屋根がギザギザした形状が特徴です。
住宅ではなく工業地帯ではよく見る屋根で、イギリス産業革命時代に紡績技術として伝わったそうです。
太陽の光を室内に引き込むために、ハイサイドライトを設けた壁を設けたことから、このような形になったと考えられています。
鋸屋根にはハイサイドライトが備えられており、十分な換気が行えると同時に自然光を取り入れられます。
節電効果が得られるだけでなく、冷暖房効果を高め、空気を循環させ快適な空間作りが可能です。
急な角度なため、谷部分に雨水や雪が集まり劣化が進行し、雨漏りリスクが高くなります。
定期的な清掃で屋根の状態を点検しなければならず、防水や対候性が高い素材を使うため、リスクを最小限に抑えるためのメンテナンス費用がかかります。
M型屋根
屋根に積もった雪は重く、力のある男性でも大変な作業です。
近年は、雪下ろしの手間を少なくできる無落雪屋根にリフォームする家庭も増えています。
谷部分に取り付けたダクトを通して水が流れるため、氷柱ができにくくなり歩行者の安全性が確保されます。
隣家に雪や雪解け水が落ちないため、トラブルにもなりにくいなどメリットが多いです。
中心にダクトがあるため、積雪時以外ではゴミが溜まりやすく、掃除が大変です。
防水性能を維持するためには、年に数回のメンテナンスを欠かせませんし、施工技術によって違いが出るのがデメリットです。
マンサード屋根
おとぎ話に出てくるような形状の屋根で、二つの傾斜面をもっています。
海外ドラマなどで見かけることが多くなりますが、屋根の上部に空間ができ、屋根裏部屋などを作れます。
国内では見かけることは少ないですが、郊外のおしゃれなカフェなどに利用されることが多いようです。
メリットとしては、個性的な外観になることや建築制限に対応できることが挙げられます。
1階を居住区として、屋根裏をアトリエとして使うなど、インテリア感覚の建物に見せられるでしょう。
水はけもよく、傷みにくいのもメリットになります。
個性的な住宅になりますが、通気性が悪く勾配の境目から雨漏りするリスクがあります。
ソーラーパネルの設置が難しいため、省エネ住宅には不向きです。
ギャンブレル屋根
上部は緩やかな勾配、下部は急勾配と2種類の屋根が交差しており、南側を緩やかにすることで、夏の暑さをしのぎ快適に過ごせるように設計されています。
雨水がスムーズに流れるように設計されていることからも、積雪から住宅を守る形状であることがわかります。
ジブリ作品「魔女の宅急便」にも登場しており、ヨーロッパでは多くみられる屋根です。
屋根裏空間を効率よく使えるため、収納スペースを広く取りたいときに用いられます。
海外ドラマや映画では、農家や牧場の建物で見られ、洋風住宅に取り入れられるなど人気が高い屋根です。
国内では積雪が多い北海道で利用されており、ソーラーパネル設置ができないのがデメリットになります。
かまぼこ屋根
体育館の屋根と言えばイメージがわきやすいのではないでしょうか。
一般住宅では少ないですが、住宅のデザインを重視したい人に人気です。
雨や雪などが積もりにくくはけやすいのが大きな特徴で、屋根に残らないのはメリットになります。
屋根裏を収納スペースではなく、部屋として使いたいのであれば、デザインと機能性を兼ね備えたかまぼこ屋根を検討してみてください。
おしゃれで他人と被らないかまぼこ屋根ですが、傾斜がほとんど存在しないため頂上にゴミや雨水がたまります。
屋根材が劣化すると、雨水が侵入して雨漏りになり腐食やカビの原因となります。
水はけは良くてもメンテナンスは必要ですし、頂上に集中して傷みが出るのはデメリットです。
複合タイプ屋根
様々な形状の屋根を組み合わせることで、個性的な住宅にデザインできます。
平屋の外観をスタイリッシュにしたいなど、個性を建物に反映させられるのがメリットです。
組み合わせは施工会社と相談し、雨漏りがしないように考えなければなりません。
あまりにも複雑な形にしてしまうと、内部構造も複雑になるため工賃が高額になります。
部分的に防水工事が必要など、メンテナンスも大変になりますから、施工前にはハウスメーカーとよく話し合い、納得できる複合屋根をデザインしましょう。
屋根の形状と併せて考える屋根材の特徴
屋根は住宅を守る役目がありますから、形状だけでなく機能性を高める屋根材を選びましょう。
どのような屋根材があるのか、相性のよい屋根の形状はどれなのかを説明します。
スレート
シンプルで初期費用が安いため、新築住宅の多くがストレートを利用しています。
どのような形状とも相性が良く、カラーバリエーションが豊富で施工職人を選ばず依頼しやすいのが特徴です。
水に弱いのがデメリットのため、水はけが悪い陸屋根やバタフライ型屋根には不向きです。
表面には防水加工を施しますが、耐久性は5〜7年と定期的なメンテナンスを行う必要があります。
和瓦・洋瓦
和風の住宅にはおしゃれな洋瓦を使うと趣がありスタイリッシュに仕上がります。
伝統的な雰囲気が魅力で、メンテナンスを続ければ一生ものとも言われ、塗装を必要としません。
瓦は断熱性能が高く冷暖房を効果的にするだけでなく、通気性も高いのが特徴的です。
黒が一般的ですが、カラーバリエーションが多くファッショナブルな住宅が完成します。
デメリットとしては、重量感があるため地震などで負荷がかかることや初期費用が高額になることでしょう。
軽量瓦
和瓦や洋瓦は重厚感があり品格を感じさせますが、防災面では危険性が高いことが挙げられます。
そこで、従来の瓦を軽くし、落ちたり割れたりしても危険性を少なくしました。
陶器製ですからメンテナンスもほとんど必要ありませんし、長持ちします。
断熱性や遮音性にも優れているため、従来の瓦と同じように使い住宅を守りますが、初期費用が高くなるのがデメリットです。
メンテナンスが不要なことや、耐久性を考えるとコストパフォーマンスは良い屋根材です。
ただし、台風などで飛来物が当たることで破損しやすいので注意しましょう。
ガルバリウム鋼板
ガルバリウム鋼板とは、耐久性や耐熱性だけでなく防食作用を持ち合わせた耐久性のある鋼板です。
遮音性が高いだけでなく、防汚性がありメンテナンスしやすく、耐震性も期待できます。
断熱材が一体になった屋根材を使えば、断熱効果を高められ冷暖房が効きやすくなれば省エネ対策になります。
リフォームにも適しており、スタイリッシュな外観にしたいときにおすすめします。
バリエーションが少なく、衝撃に弱いため飛来物でへこんでしまうのがデメリットです。
エスジーエル鋼板
次世代のガルバリウム鋼板とも言われており、耐食性が高く海辺の塩害に強いのが特徴です。
金属屋根は、経年劣化によって腐食し錆びてしまうのがデメリットでした。
ガルバリウム鋼板よりも、錆に強くなるため耐久年数が長くなり、メンテナンス次第で30年以上長持ちします。
軽量でありながら耐震性に優れているため、倒壊の危険性も低く安全に生活ができるのもメリットです。
アスファルトシングル
洋風デザインがおしゃれなアスファルトシングルは、グラスファイバーにアスファルトをコーティングした屋根材です。
シート状ですから、ひび割れなどの劣化もなく、海外では主流の屋根材です。
柔軟性のある素材で、どのような屋根にも使え、耐震性も高く遮音性もあり雨音を気にすることもなくなります。
耐用年数は20〜30年で、価格もリーズナブルですからコスパとデザイン性を同時に手に入れられます。
シートのため剝がれやすく、経年劣化によって砂が落ちやすいのはデメリットと言えるでしょう。
屋根を選ぶ時のポイント
外観だけでなく住宅の性能にかかわる屋根は、慎重に選ぶ必要があります。
屋根は住宅の快適性だけでなく、家族を守る役目がありますから、耐久性がありメンテナンスを抑えられる屋根材を選びましょう。
初期費用が高を考えると躊躇してしまいますが、メンテナンス費用を考えるとトータル的に考えるべきです。
次に考えたいのは機能性で、耐震性や遮音性・防水性などから、予算内で何を重視するか決めていきます。
これらが決まってから住宅にマッチしたデザインを決めましょう。
まとめ
屋根は種類が多く、それぞれにメリット・デメリットがあります。
住宅のデザインにマッチした形を選ぶのはもちろんのこと、予算内で必要な機能を
選びましょう。
耐久性やメンテナンスのしやすさなども考慮すれば、マイホームにピッタリの屋根が見つかります。